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FeLVとは?
感染から病気の発生まで

感染ルート
感染猫の血中には感染力を持ったウイルスが存在し、ウイルスが唾液、涙、糞便中に排泄されます。猫同士の喧嘩による咬み傷、あるいは長期にわたって、なめ合いながら同居していると感染しやすいといわれています。とくに多頭飼育環境では、感染猫との同居、グルーミング、トイレの共有などを通じてウイルスが感染しやすい上、場所の取り合いなどで猫にストレスがかかっていると感染を助長します。感染の経路は、口から、鼻からが主体と考えられるます。口の中の咽頭のリンパに侵入したウイルスは、数日のうちに細胞により運ばれ血液中に出ます。その後、脾、リンパ節、腸管、膀胱、唾液腺などの標的組織に運ばれ、さらに骨髄にも達します。母子間の感染で、子猫が生まれる前に母猫の体内で感染することを垂直感染と呼び、それが起こると死産や、生まれてもすぐ死んでしまう子猫衰弱症候群がみられます。生後直ちに感染した場合は、ほぼ100%持続感染となります。感染から2-4週でウイルス血症(血中のウイルス抗原の検査)が陽性となります。

猫はどのくらいFeLVに感染しているか
 FeLVによる感染は世界中の家猫でみられます。感染率は地域差もありますが、猫の密度と飼育形態に関連するようです。さらに地域により猫の集団に強いタイプのウイルスが蔓延していたり、感染したボス猫が他の猫を咬んで回っていれば、その集団での感染率は高くなります。東京都内の病院を訪れる猫のFeLV陽性率は、来た猫をランダムに調べる検査で約5%-10%です。一般に非常に多くの猫が感染すると思われますが、感染から回復する猫も多いようです。
FeLVで汚染された多頭飼育家庭では、感染猫が1頭存在すると残りの1/3はウイルスに感染していると言われます。これは集団飼育下での濃厚な接触とストレスに起因するものでしょう。ストレスがなければ、成猫はそれほど多く感染するとは思えません。

急性期
 感染後約2-4週程度でウイルス検査が陽性になります。この検査が意味するものは、とにかく血液中にウイルスの蛋白が存在する(ウイルス血症)ということで、これだけではこの猫が今後どうなるかはわかりません。感染を受けた猫の内、ウイルス血症を起こすものの割合は70-90%とされています。それ以外の猫は、何らかの機構でウイルスをはねつけ、感染自体が成立しないようです。ウイルス検査がはじめて陽性になる時期に、急性期の病気がみられます。この時期にウイルスは骨髄に達し、骨髄の細胞内で増殖しようとするのですが、免疫が成熟している猫では(大体4週齢以降)、同時にFeLVに対する免疫が高まり、ウイルスが増殖する骨髄の細胞を破壊しようとします。そうすると、発熱や元気消失、リンパ節の腫れがみられるようになり、病院で検査を受けると、白血球減少症、血小板減少症、貧血などが発見されます。

ウイルス感染からの回復
 成猫では、急性期の病気に耐え、ウイルスが排除されることがよくあります。この場合、感染は一過性で終結したと判定されます。ウイルス検査は感染から16週以内に陰転します。これは、猫が成熟するにしたがって、感染防御ができるようになるためです。新生子ではウイルス感染から回復しないもの(持続感染)が70-100%、8-12週齢では30-50%ですが、その後急速に防御能が高まり、16週齢以降の猫では持続感染になるものは通常10-20%未満しかありません。ただし、免疫の邪魔をする要因があれば、この限りではありません。すなわち、ステロイドホルモンを投与したり、あるいはストレスで体内にステロイドホルモンが大量に出ていれば、免疫の足をひっぱることになるのです。このため、ストレスの多い多頭飼育の集団では、感染から回復しない猫が増えるのです。回復する症例では、血中からウイルスが消失し、ウイルス排泄もなくなります。ウイルスはしばらくの間、骨髄細胞の中に潜伏していますが、時間とともにこれも消失します。この間に、骨髄細胞の遺伝子に組み込まれたウイルスのDNAはズタズタに断片化し、ウイルスの生産はできなくなります。骨髄細胞中でのウイルスの潜伏感染は正常の回復過程ですが、すぐにはなくなりません。通常は感染後6-9カ月まで、まれに1年かそれ以上続く(10%の症例)ことがあります。この間、発病の危険性はほとんどなく、ウイルス排泄の危険はないといえます。妊娠すると免疫が抑制され、ウイルスが再活性化することがあるため、それは避けた方がよいとされています。ウイルス感染からの回復がみられた猫は二度とFeLVに感染することはありません。ただし、その後何もないかというと、決してそうではなく、一度細胞の中にウイルスの遺伝子が入り込んでいますので、やはり遺伝子の一部に異常が起こっている可能性もあります。このため、一度も感染したことがない猫に比べリンパ系のがん(悪性腫瘍)発生のリスクは高いとされています。

持続感染へ
 免疫がウイルスを排除できなかった猫では、感染は終結せず、持続感染となります。持続感染の定義は、感染から4ヵ月以上、ウイルス血症(ウイルス検査陽性)が続くことです。持続感染になった猫は、終生ウイルスは陽性のままになります。しかしながら、急性期の病気は一旦おさまるので、外からみているだけでは、あたかもウイルス感染が終結したようにみえます。このため、FeLV検査で一度陽性と出た猫は、症状が収まったようにみえても、ウイルス検査を繰り返して感染の状態を確認する必要があるのです。持続感染に入ったばかりの時に何も症状がなくなるのは、免疫が戦うのをやめるからです。別に免疫が負けてしまうわけではないのですが、感染した細胞を攻撃するのをやめてしまうのです。ウイルスは骨髄の細胞に持続感染します。したがって、血液中に骨髄から送り出されてくる血液細胞の中にはウイルスが存在し、血液の中にもウイルスは流れています。このため、ウイルス検査が続けて陽性になるのです。その後、数ヵ月から数年は、表面的には健康な状態が続きます。

持続感染猫の発症
 持続感染猫は、感染から約3年以内に発症して、死亡するものも多くあります。感染後2年で63%、3年半で83%が死亡するというデータがあります。持続感染期には、がん(悪性腫瘍)、血液の病気、免疫の病気、他の感染症など、様々な病気がみられます(表1)。このような病気はFeLV感染に関連して起こるものなのでFeLV関連疾患と呼ばれます。
FeLVは骨髄細胞のみならず、体中の各種の細胞に感染するため、多様な病気が起こります。しかも感染した細胞をがん化させたり、あるいは殺してしまったりと、影響は様々です。たとえば、リンパ球をがん化させれば、リンパ腫という悪性腫瘍が起こり(図2)、リンパ球を殺してしまえば、免疫抑制が起こり、他の感染症にかかりやすくなります(二次感染症)。あるいは、赤血球を作る若い細胞をがん化させて赤血病という悪性腫瘍(図3)が起こることもあれば、若い細胞を死滅させて、重い貧血になることもあるのです。これらの病気は外からみただけでは診断は難しいものばかりです。猫に何らかの症状がみられたら、病院で詳しい検査が必要になります(表2)。

表1。FeLV関連疾患

骨髄の腫瘍性疾患(白血病)
骨髄低形成性疾患(血球減少症)
骨髄異形成症候群(前白血病状態)
リンパ系腫瘍(リンパ腫)
貧血
汎白血球減少症様症候群
雌猫の繁殖障害
神経ならびに運動器疾患
二次感染症あるいは日和見感染症
免疫介在性血球減少症
糸球体腎炎

表2。こんな症状がみられたら病院で検査を

元気食欲がない
貧血(耳や鼻が白い)
呼吸が苦しい
長く続く下痢
治らない皮膚病
発熱(元気がない、耳が熱い)
リンパ節の腫れ(のどの下の腫れ物)
口内炎
慢性鼻炎
図2 がん化した異常なリンパ球
図2 がん化した異常なリンパ球
図3 がん化した赤血球を作る細胞
図3 がん化した赤血球を作る細胞
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